イギリスの郵便局スキャンダル:富士通製”ホライズン”のバグが引き起こした混乱

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事件の発覚と初期の調査

2000年代初めイギリスの郵便局で使用されていた富士通製の業務管理ソフト「Horizon」に重大な不具合があることが判明しました。このシステムは、郵便局の日々の財務を管理するために使われていましたが、特定の条件で誤った会計データを生成してしまうバグが存在していたのです。この問題は初め、大きな注目を集めずにいましたが、次第にその深刻な影響が明らかになり、多数の郵便局員が不正行為を疑われる事態にまで発展しました。

影響の範囲と個人への影響

このシステムの誤動作により、何百もの郵便局員が不正行為や横領の疑いで起訴され、多くが有罪判決を受けました。つまり冤罪です。これらの判決は、郵便局員個人の生活に深刻な影響を及ぼし、名誉の失墜、財政的な困難、さらには精神的な健康問題に至るまでの様々な問題を引き起こしました。

この問題は、技術的な欠陥だけでなく、司法システム企業の説明責任に疑問があります。こんなにも多くの不正が起こることに不自然さを感じなかったのでしょうか。少しもシステムの間違いを疑わなかったのでしょうか。

イギリスでは矛先が富士通に向かい始めている

事件が発覚してから数年後、多くの冤罪が明らかになり、受刑者の再審が行われました。この過程で、多くの有罪判決が覆され、冤罪が認められた人々への補償が進められました。

イギリス政府は、郵便局のホライゾンシステムスキャンダルにおける富士通の役割について、同社に責任を取ることを求めています。公的調査で富士通に責任があると判断された場合、富士通は誤って窃盗で告発された郵便局マネージャーたちに補償を行う必要があります。

イギリスの労働年金大臣メル・ストライド氏は、補償費用を納税者が負担することはないと強調しており、富士通には厳しい結果がもたらされる可能性があります。富士通は、スキャンダルにおける自社の役割について謝罪し、公的調査への協力を表明しています。

富士通は引き続きイギリス政府の大規模ITプロジェクトに関与

富士通は、ホライゾンシステムスキャンダル以降、イギリス政府から150件以上の契約を獲得しています。これらの契約は、政府の「戦略的サプライヤー」として、年間1億ポンド以上の契約を行っていると推定されており、過去10年間で数十億ポンドに上るとされています。

富士通が提供するサービスには、ホライゾンシステム以外にも、複数の政府部門向けのITサービスが含まれています。これには内務省、外務省、環境・食糧・農村省、国防省などがあります。これらのサービスには、警察国家コンピュータ(個人の犯罪記録を保存するシステム)、政府の洪水警報システム、2023年3月に導入された国家緊急警報システムなどが含まれています。

また、富士通は英国歳入関税庁(HMRC)とも重要な契約を結んでおり、2022年2月には最大5億ポンドに及ぶ5年間のデスクトップサービス契約を獲得しています。さらに、地方政府や自治体との契約もあり、ブリストル市議会との2,500万ポンドのデジタルサービス変革契約や、北アイルランドの教育機関との4億8,500万ポンドの「学校管理システム」契約などがあります。

富士通は、これらの契約を失う可能性もありますが、政府との契約を完全に終了することは非常に困難であり、過去に契約終了後に政府を訴えるなどの訴訟リスクも存在します。例えば、富士通は以前、NHSのITプログラムに関連して、政府との契約が終了した後、政府を訴え、重要な賠償を受け取っています。

したがって、政府と富士通との関係は複雑であり、スキャンダルの結果にもかかわらず、政府は引き続き富士通との契約を維持しています。

  • イギリス政府と富士通UKの癒着を指摘する声はあるそうです。こんなにイギリス政府がらみのシステムに富士通がからんでいたなんて知りませんでした。
  • 当時まじめに働いていたのに罪に問われてしまった郵便局員の方々のことを思うと、とても苦しいですね。冤罪が認められたのは良かったですが、あまりにもひどすぎます。
  • システムのバグが人生を壊すことがあるということを気に留めておかないと、また同じようなことが起きないとも限らないです。

追記:富士通CEO、イギリス議会公聴会で証言

イギリス議会のビジネス・通商委員会が16日に開催した公聴会で、富士通の欧州地域共同最高経営責任者(CEO)、ポール・パターソン氏が証言しました。パターソン氏は、富士通の会計システムに欠陥やエラーが存在したことを認め、「富士通がこの恐ろしいえん罪に関与したことを謝罪したい」と述べました。しかし、被害者への補償に関しては、「道義的に責任がある」としながらも、富士通の責任が明確になった時点で判断するという立場を示し、具体的な時期や金額には言及していません。

この問題に対するイギリス政府の反応も注目されています。公聴会には被害者の代表者も出席し、富士通の謝罪に対して「心がこもっていればいいが、言葉だけでは簡単だ」と不満を表明しました。一方、イギリスのスナク首相は、被害者救済のための法整備を進める方針を示しており、今後の動向が注目されています。

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