「閉ざされた雪の山荘で」における叙述トリックとは
叙述トリックとは、物語の書き方や見せ方を工夫することで、読者をだます手法です。叙述トリックは、物語の魅力を高める効果があります。
この記事では、叙述トリックの傑作と言える東野圭吾の長編推理小説「ある閉ざされた雪の山荘で」を例にとって、叙述トリックの種類や使い方を解説します。この小説は、劇団のオーディションに合格した男女7人が、演出家の指示で「豪雪に閉ざされた山荘での殺人劇」を舞台稽古するという設定から始まります。しかし、次々と仲間が失踪し、殺されたと思われる状況を説明するメッセージが残されます。これは本当に芝居なのか、それとも実際に殺人事件が起こっているのか。唯一の部外者である主人公は、真相に迫っていきます。
叙述トリックの種類と使い方
叙述トリックには、さまざまな種類がありますが、ここでは、以下の3つに分類してみます。
- 語り手の信頼性を低くする
- 時系列や場所を伏せる
- 人物の正体や動機を隠す
それぞれの叙述トリックの使い方と、この小説での具体例を簡単に紹介します。
語り手の信頼性を低くする
語り手の信頼性を低くするというのは、物語を語る人物が、読者に真実を隠したり、嘘をついたりすることです。読者は、語り手の言葉をそのまま信じてしまいますが、実は語り手は自分の都合や目的に合わせて、物語を歪めているかもしれません。
この小説では、物語は、主人公の一人称視点で語られますが、彼は劇団の一員ではなく、演出家の友人という立場です。彼は、自分が見聞きしたことをそのまま伝えると言いますが、実は彼自身が事件に関わっていることが後に明らかになります。彼は、読者に真実を隠すだけでなく、嘘をついたり、誤解を与えたりしています。
時系列や場所を伏せる
時系列や場所を伏せるというのは、物語の出来事がいつどこで起こったのかを明確に示さないことです。読者は、物語の流れに従って、出来事の時間的な順序や空間的な関係を想像しますが、実はそれは作者が意図的に作り出した錯覚かもしれません。
この小説では、物語は、山荘での舞台稽古の様子と、それに先立つオーディションの回想シーンが交互に描かれます。しかし、これらのシーンの時間的な順序や空間的な関係は、明確に示されません。読者は、物語の流れに従って、山荘での出来事が現在で、オーディションが過去であると思い込みますが、実はその逆であり、山荘での出来事はすでに終わっていることが後に明らかになります。また、物語の舞台は、山荘とオーディション会場の2つだけではなく、実はもう一つの場所が存在します。それは、主人公が山荘から脱出した後に向かった、演出家のアジトです。この場所は、物語の最後にしか登場しませんが、実は物語の鍵を握る重要な場所なのです。
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人物の正体や動機を隠す
人物の正体や動機を隠すというのは、物語に登場する人物が、本名や素性を明かさなかったり、行動の理由を説明しなかったりすることです。読者は、人物の言動から、彼らの性格や関係を推測しますが、実は彼らは自分の本当の姿や目的を隠しているかもしれません。
この小説では、物語に登場する人物は、全員が偽名を使っており、本名や素性は不明です。また、彼らの動機や目的も、最後まで明かされません。読者は、彼らが本当に演劇をするために集まったのか、それとも何か別の理由があるのか、疑問に思います。物語の結末では、彼らの正体や動機が一部明らかになりますが、それでもまだ謎が残ります。
「閉ざされた雪の山荘で」映画化決定!公開は2024年1月12日
以上のように、この小説は、叙述トリックを巧みに使って、読者をだまし、驚かせ、考えさせる物語になっています。叙述トリックは、物語の書き方や見せ方に工夫を加えることで、物語の魅力を高める効果があります。ぜひ、この小説を読んで、叙述トリックの魅力を感じてみてください。
そしてこのように魅力的な小説の世界が映画になります。出演は
重岡大毅
中条あやみ
岡山天音
西野七瀬
堀田真由
戸塚純貴
森川葵
間宮祥太朗
さあ、小説の世界がどのように映像で表現されているのか、今から非常に楽しみです。
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